戦国武将の落ち武者に取り憑かれた大学生

戦国武将の落ち武者に取り憑かれた大学生

舞香は歴史好きの大学生だった。特に戦国時代に興味があり、古い城跡や戦場跡を訪れるのが趣味だった。
ある日、彼女は友人から聞いた話に惹かれ、ある城跡に足を運んだ。

その城は、かつて有名な武将の最後の拠点だったと言われている。
しかし、そこには不気味な噂があった。落ち武者の霊が彷徨っているというのだ。

もくじ

不気味に近づく足音

舞香は、薄暗い森の中を進みながら、心の中でその噂を無視していた。
木々の間から漏れる夕日が、彼女の不安を少しだけ和らげてくれる。

コツコツコツ…。何かが足音を立てているような気がしたが、
気のせいだろうと思い込むことにした。

城跡に着くと、そこは朽ち果てた石垣と草に覆われた広場だった。
舞香は、周囲を見回しながら、落ち武者の伝説を思い出していた。

落ち武者の怨霊が忍び寄る

戦場で命を落とした武士たちの怨念が、今もなおこの地に留まっているのだろうか。
そんな考えは、彼女の心の奥に潜む恐怖を刺激する。コツコツコツ…。
今度は、はっきりとした音に感じられた。

「誰かいるの?」舞香は、声を振り絞るように問いかけた。
しかし、返事はない。ただ、風が吹き抜ける音だけが響く。

彼女は少し安心し、スマートフォンを取り出して周囲の写真を撮り始めた。
ああ、ここは歴史の一部なんだ、と思いながら。

しかし、その瞬間、彼女の背後から不気味な声が聞こえた。
「お前はここに何しに来た?」舞香は凍りついた。

落ち武者の怨霊が乗り移る

振り返ると、そこには黒い影のようなものが立っていた。
目は虚ろで口元は歪んでいる。恐怖が一気に彼女を襲った。

「い、いえ、ただ…」言葉が出ない。影はさらに近づき、彼女の耳元で囁く。
「お前も、私の仲間になれ。」その瞬間、彼女は心臓が破裂しそうなほどの恐怖を感じた。

舞香は、後ろに下がりながら、必死にその場から逃げようとした。
だが、影は彼女の動きを阻み、まるでその場に固定されているかのように動かない。

耳元で響く声は、徐々に彼女の心に侵入してくる。
「お前は私の後継者だ。私の力を受け入れろ。」

その言葉を聞いた瞬間、舞香の中に何かが芽生えた。だがそれは彼女を支配する恐怖だった。
彼女の目の前には、戦国時代の武士が立ち尽くしている。

彼の姿は、過去の栄光を背負ったまま、今もこの世に留まっているのだ。
それを感じ取った瞬間、舞香は自分がどれほど恐ろしい場所にいるのかを理解する。

舞香は全力で逃げ出した。しかし足元がふらつき、まるで誰かに引き寄せられているような感覚に襲われた。
彼女の心の中で、影はまだ彼女を見つめている。

「お前は逃げられない。お前は私のものだ。」その言葉が彼女の頭の中で鳴り響く。

付き纏う怨霊の恐怖

舞香は、ついにその城跡を後にしたが、心のどこかで影が彼女を捉えていることに気づいていた。
彼女の中には、影の一部が入り込んでしまっていたのだ。
日常に戻ろうとする度に、彼女の心には不安が湧き上がり戦国の武士の影が忍び寄ってくる。

それから数日後、舞香は何気ない日常を送っていた。しかし、ふとした瞬間に、耳元で囁く声が聞こえた。
「お前は私の後継者だ。」舞香は、恐怖とともに笑みを浮かべた。
彼女はもう、逃げることはできない。影は彼女の心の中に完全に住み着いていたのだ。

悪夢にうなされる日々

それからというもの、舞香は夜ごとに悪夢にうなされるようになった。
夢の中で、彼女は武士の姿となり、血に染まった戦場を彷徨っている。
彼女の心には、もう普通の生活は戻らない。彼女の中には戦国時代の落ち武者が取り憑いていたのだった。

舞香は、もう自分が誰なのか分からなくなっていた。彼女の心には、戦国の怨念が渦巻いている。
日常の中で非日常が静かに忍び寄っていた。

古い城跡に足を踏み入れたとき彼女の運命は、もう決まっていたのだった。

リツイート・ブックマーク大歓迎♪
もくじ